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自他覚症状の変化からみた温泉活用の効果 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
県民健康プラザ健康増進センター○郡山たか子 白澤和美 中村直文 大坪充寛 鹿屋体育大学 志村正子 |
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1 はじめに 温泉の心身に与える影響については,疲労回復,ストレス解消など広く健康増進に効果があるといわれている。 健康増進センターでは,温泉利用を中心とした教室を開催し,継続的な温泉利用による具体的な心身への影響について調査したところ,健康増進に関与する若干の結果を得たので報告する。 2 調査方法 (1)3ヶ月間の教室を5グループ実施。 この教室で教室参加前後における身体計測・自覚症状・健康行動等の改善度について検討を加えた。 ア 期間:平成13年12月〜平成15年2月 イ 対象者 (ア)40歳以上で,ストレス解消や気分転換を行い積極的な健康づくりを考えている人 (イ)社会参加の少ない高齢者 ウ 調査項目 (ア)疾病状況:既往歴,現病歴 (イ)身体計測:身長,体重,体脂肪率,血圧,骨密度 (ウ)自覚症状など:食欲,睡眠,便通,肩こり,腰痛,関節痛,疲労度,咳・痰,夜の頻尿,冷え性,皮膚のかゆみ (エ)健康行動:ブレスローの7習慣に森本(大阪大学)らの8習慣を重ねて和集合したもの(10) (オ)ストレス度:精神的ストレス(16),身体的ストレス(9),ストレス対処能力(4) (カ)社会参加(5),体調(5),気分(10) ※(ウ)〜(カ)問診による状況調査 ( )は項目数 (キ)体力測定:閉(開)眼片足立ち,握力,長座体前屈 (2)教室展開 ア 入浴方法・時間 当センター多目的温泉施設の8浴槽を5〜10分ずつ入浴する(計60〜70分:途中に2〜3回の休憩含む) イ 入浴回数 当センター多目的温泉施設を1週間に1回以上利用 ウ 入浴確認 毎週金曜日は教室形式で開催し,体調確認や利用方法等の再確認を行った。 エ その他 温泉活用法など健康づくり学習会を4回開催 (3)参加者の状況 表1のとおり (4)1組22人については,教室前後に血液生化学検査(血清脂質など)を実施した。 3 結果 (1)教室参加以前の温泉活用と調査項目結果の比較温泉利用頻度により,血圧・自覚症状・ストレス度に有意な差は認められなかった。 (2)教室全体の前後比較 表2のとおり (3)身体計測の変化 血圧:教室終了時の収縮期血圧,拡張期血圧ともに有意に低下した。さらに収縮期血圧150以上あるいは拡張期血圧95以上のグループについても有意に低下した。(図1) (4)健康行動の変化 男女とも有意に改善した。特に女性では食生活・運動において改善がみられた。 (5)自覚症状の変化 各項目を4段階に点数化(高い方がよい)し,その合計点をもとに−1SD以下を「訴えの多い」群,+1SD以上を「訴えの少ない」群として検討した。 ア 全体的に,教室終了時が有意に改善していた。 イ 教室開始時の「訴えが多い」群における変化 (ア)男女とも,「訴えが少ない」群より改善度が有意に大きい。 (イ)各項目を4段階に分けたうち良い方2つを「1点」,悪い方2つを「0点」とし前後を比較したところ,食欲・便通(男女とも),睡眠・肩こり(女性のみ)が有意に改善した。 ウ 教室期間中の温泉利用回数における変化1回未満のグループに比べ週2回以上のグループは,より有意に改善した。特に女性は2回以上のグループで,食欲,肩こり,疲労度が有意に改善した。(図2) (6)ストレス度の変化 ストレス度が低い方から,0,1,2と配点し,合計した。 ア 全体的にみると,女性は身体的,精神的ストレスが有意に改善した。 イ 教室期間中の温泉利用回数における変化週2回以上利用のグループは教室後に精神的ストレス(女性のみ)・身体的ストレス(男女とも)が,有意に改善した。なお,男性における精神的ストレスも改善の傾向はみられた。 ウ 年代間でみたストレス度の変化精神的ストレスは,年代間に差はなかった。身体的ストレスは,男性で70歳以上より60代が,女性で70歳以上より50歳以下が,改善度が大きい。(図3) (7)血液検査結果 中性脂肪,総コレステロール値が低下した。 4 考察及びまとめ 今回の調査から,3ヶ月間の温泉利用により自覚症状や心身のストレス度は全体として改善していた。まず,自覚症状においては睡眠・食欲・便通といった基本的生理項目の改善は温泉利用と自律神経緊張緩和,さらには,肩凝りや疲労感の回復は血流亢進等とのいわゆる温泉効果を裏付ける結果となった。 また,収縮期および拡張期血圧とも有意に改善し特に境界域血圧群での改善は温泉の健康づくり活用上興味深かった。 心身のストレスへの効果については,全体的に男女とも一定の効果がうかがえ,女性での効果は有意であった。特に週2回以上の利用群において改善度が大きいことから健康増進上,週2・3回利用を啓発していきたいと考えている。 また,教室開始前における温泉利用回数の多少は,自覚症状等に有意な差が認められなかった。しかし教室前後で有意差が認められ,また健康行動も改善したことから,温泉利用に対する指導の重要性がうかがえた。 なお,今回の参加者に対し,1年後に医療機関受診状況について調査した結果,ほとんどが教室開始前より受診回数が大きく減っていることから,医療費動向等も検討していきたい。 表1.年齢構成と教室前温泉利用状況
表2.教室前後比較(対応のある2つの母平均の差の検定)
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図1.教室開始時に血圧境界域以上(最高150,最低95) のグループの前後比較 *・・・p<0.05 |
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図2.教室期間中に週2回以上温泉利用グループの各項目前後比較 (有意確率:回答の良い方を1点,悪い方を0点として対応ある2つの母平均の差の検定を実施) *・・・p<0.05 |
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図3.年代ごとの改善度比較 *・・・p<0.05 |
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