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健康科学館データからみるストレス度とその背景
○和田安代 白澤和美 有元由紀 郡山たか子 中村直文 
大坪充寛(県民健康プラザ健康増進センター)  萩裕美子(鹿屋体育大学)

1.はじめに

県民健康プラザ健康増進センター健康科学館は,健康づくり学習の体験型施設として利用されており,身体計測や食生活・運動・ストレスチェック等により簡易ではあるが,利用者が健康度を把握できるシステムとなっている。
今回は健康科学館利用者のうち,20歳以上のデータをもとにストレスと生活習慣の関連を中心に検討を加え,ここに報告する。

2.システム概要

  1. 利用方法
     ・年齢や性別等の属性・食生活等のチェック項目に対し,パソコン画面上で,本人が直接選択。身長・体重・血圧等も測定可能。
     ・チェックカード利用により,アドバイスシートが受け取れる。

  2. 構成内容
     ・基礎データ(居住地・性別・年齢・飲酒喫煙状況等)
     ・計測データ(身長・体重・体脂肪率・血圧等)
     ・生活習慣チェック(食生活・運動・ストレス) 

3.今回の分析の対象者及び方法

  1. 対象者
    平成13年7月〜平成14年2月末における初回利用者で20歳以上の者
    (ストレスチェック実施分)
  2. 対象者概況
    (1)利用者数
    総数2,038名中,男性が 615名(30.2%), 女性が1,423名(69.8%)である。
    (2)年代(図1) 
    30代の利用が26.1%,次いで20代,40代と続く。60代の利用は12.3%,70代以上の利用も9.6%みられる。
    (3)居住地(図2)
    鹿屋市の方の利用が最も多く,46.7%を占める。次いで,垂水市・肝属郡,曽於郡,鹿児島市と続く。
  3. 方法
    ・ストレスに関する設問10項目(表1)に対し,あり2点・どちらともいえない1点・なし0点を配点し,合計得点をストレス得点とした。(クロンバックα=0.7651)
    ・ストレスと生活習慣の関連をみる項目として,喫煙・飲酒・運動・食習慣(定時の食事)の4つをあげた。

4.結果

  1. ストレス得点と生活習慣項目からみる全体像
    (1)生活習慣の概況(図3・4)
    生活習慣4項目において,若い年代(20〜40代)に望ましくない生活習慣群の割合が高い。

    (2)ストレス得点平均値概況(図5)
    <1>若い年代ほど、ストレス得点平均値が有意に高い。(F値 45.707,p<0.01)
    <2>男性に比べ,女性のストレス得点平均値が有意に高い。

    (3)ストレス得点と生活習慣項目との関連(表2・3)
    <1>非喫煙群に比べ,喫煙あり群のストレス得点平均値が有意に高い。
    <2>飲酒では関連はみられず。
    <3>定時の食事群に比べ,不定時の食事群のストレス得点平均値が有意に高い。
    <4>週1回以上の運動なし群に比べ,運動あり群のストレス得点平均値が有意に低い。
    <5>最も相関の高い因子は「年代別」ついで「運動」,「性別」である。

  2. ストレス得点と生活習慣項目からみる年代・性別ごとの像(表4)
    (1)20〜30代の男女では,21本以上の喫煙群(女性;喫煙あり群)・不定時の食事群のストレス得点平均値が有意に高い。また,週1回以上の運動あり群のストレス得点平均値は有意に低い。

    (2)40代男性では,21本以上の喫煙群・多量飲酒群のストレス得点平均値が有意に高い。また,40代女性では,週1回以上の運動あり群のストレス得点平均値が有意に低い。

    (3)50代男性では,21本以上の喫煙群のストレス得点平均値が有意に高い。

5.考察及びまとめ

今回の調査では,ストレス得点平均値が高い群の生活習慣として,喫煙・不定時の食事の2点が把握され,その一方で運動実践がストレス緩和に有利に働いていることもうかがえた。特に若い年代に対しては,リズムのある生活スタイルとともに,喫煙や運動を含め,休息や余暇のあり方等について生活習慣を改善するという観点からの指導が必要と思われた。
また,60歳以上の年代は,ストレスをあまり意識していない結果がでたが,これは当センター利用の高齢者は社会参加及び健康意識が高いことが予想され,バイアスのかかった集団での評価という面と,今回の調査の基準とした10項目では高齢者のストレスを把握しきれなかった面が考えられる。
今後,調査方法等を変えての検討が必要と思われた。

最後に,ストレス対策は健康づくりの重要な課題の一つであり,今後とも,食生活・運動・休養におけるより効果的な指導 内容等について調査検討をすすめるとともに,その啓発に努めていきたい。

 

 

表1.ストレスチェック設問
   ストレスチェック設問10項目
      1 何かをするとすぐ疲れる
      2 かぜをひきやすい
      3 頭がすっきりしない
      4 よく、めまいやたちくらみがする
      5 食べ物が胃にもたれるような気がする
      6 好きだったものを食べたいと思わなくなった
      7 朝、気持ちよくおきられない
      8 なかなか眠れない
      9 仕事や勉強にとりかかる気になれない
      10 人に会うのが面倒である

表2.全体からみたストレス得点と生活習慣との関連
   全体 男性 女性
喫煙(有無・本数) ** ** **
飲酒(適正量)     **
食習慣(不定時の食事) ** ** **
運動(週1回以上の有無) ** ** **
                 *p<0.05,  **p<0.01

表3.重回帰分析
R=.365 β
年代別 -212**
性別 .162**
運動有無 -.164**
喫煙有無 .105**
食習慣 不定時の食事 .092**
飲酒 .051
     *p<0.05,  **p<0.01

表4.年代・性別からみたストレス得点と生活習慣との関連
   20代 30代
全体 男性 女性 全体 男性 女性
喫煙(有無・本数) ** *注1 **   *注1 **
飲酒(適正量)   *注3        *及び**注4
食習慣(不定時の食事) ** ** ** **
運動(週1回以上の有無) ** ** ** ** ** **

   40代 50代
全体 男性 女性 全体 男性 女性
喫煙(有無・本数)    *及び*注1      *注2  
飲酒(適正量)           
食習慣(不定時の食事)              
運動(週1回以上の有無) **   **      

   60代 70代
全体 男性 女性 全体 男性 女性
喫煙(有無・本数)              
飲酒(適正量)  * *注5          
食習慣(不定時の食事)         
運動(週1回以上の有無)       **    
                                    *p<0.05,  **p<0.01
*注1 「非喫煙群」と比べ「喫煙本数21本以上群」の方が、ストレス得点平均値が有意に高い。
*注2 「喫煙本数1〜20本群」と比べ「喫煙本数21本以上群」の方が、ストレス得点平均値が有意に高い。
*注3 「ほとんど飲まない群」と比べ「適正量飲酒群」の方が、ストレス得点平均値が有意に低い。
*注4 「適正量飲酒群」に比べ「多量飲酒群」の方が、ストレス得点平均値が有意に高い。
*注5 「ほとんど飲まない群」に比べ「適正量飲酒群」の方が、ストレス得点平均値が有意に高い。

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