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高齢者の転倒予防についての検討
「高齢者の転倒予防についての検討〜転倒可能性群の早期把握項目を中心として〜」
県民健康プラザ健康増進センター○和田安代  鹿屋体育大学 西薗秀嗣
 医務課 大坪充寛

【はじめに】

転倒事故等での骨折は高齢者のねたきり要因の1つで,転倒の背景に高齢者の筋力・バランス能力・視力等の低下が報告されている。転倒予防教室を開催し,転倒に関与する因子及び効果的なトレーニング等について検討しているが今回は,転倒可能性群早期把握項目について生活スタイルと歩行力に関連する体力因子を中心とした検討を加えたので報告する。

【教室内容】

  1. 対象者
    転倒・つまずきの経験者及び歩行力低下を強く意識している60歳以上の男女58名
    (1)年齢・性別 平均年齢68.24±5.04歳,男性15.5%,女性84.5%
    (2)転倒経験 転倒あり32.7%(1回17.2%,2回6.9%,3・4回以上8.6%)
  2. 展開方法
      教室開始時に生活スタイル・体力等をチェック→個人トレーニング内容の提示
     →3か月間の実践→評価
  3. チェック項目
    (1)問診;生活スタイル,現病歴,転倒既往等
    (2)身体状況;体脂肪率,BMI,安静時血圧,視力,口腔内歯数,重心動揺,骨密度等
    (3)体力・歩行力状況;開眼片足立ち,長座体前屈,10m障害物歩行,10m全力歩行,
      最大1歩幅,40cm踏み台,  刻み足歩行,階段昇降等11種
  4. 運動プログラム
    転倒予防サーキットを中心とした運動を処方(運動量;250〜300kcal,頻度;週2回以上) 

【結果】

非転倒,転倒1回,転倒2回以上群において比較検討を行い,以下の結果を得た。

  1. 生活スタイル
    (1)「膝・腰等の痛み」「立ちくらみ」「家の中でのつまずき」「茶碗をおとしやすい」の割合が有意に高い
    (2)「サンダル等の日常利用」の割合が高い傾向にある。
  2. 身体状況
    (1)「年齢,性別,BMI,ウエスト・ヒップ比,視力,口腔内歯数」等で有意差はみられない。
  3. 体力・歩行力測定
    (1)「階段昇降」「40cm踏み台(踏み越し状況評価)」で有意差がみられる。
    (2)「10m障害物歩行,10m全力歩行,最大1歩幅」等で有意差はみられない。 

【考察】

問診での早期把握項目として「膝・腰の痛み,立ちくらみ,茶碗をおとしやすい」等の活用の可能性が窺えたが,各項目と血圧,握力,視力等との有意な関連は見いだし得なかった。体力・歩行力の項目は「階段昇降,40cm踏み台」が有意であり,他項目に比べ,
下肢筋力・バランス能力・巧緻性等歩行に大きく関わる因子が多く含まれることが有意差の要因と考える。
また,今後,体力歩行力項目等を追加検討し,転倒可能性群早期把握項目について整理することとしている。併せて,歩行に関連する各種体力因子で構成する転倒予防サーキット活用によるトレーニング効果も分析中である。当調査研究結果をもとに市町村等における高齢者の転倒予防教室を支援するマニュアルを作成する。

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